機能材料工学研究室
- 桑折 仁 准教授
宇宙で活用される仕組みを日常生活に適用させる
アルコール温度計では測れないような高い温度を測る手段に、熱電対(ねつでんつい)があります。これは温度差に応じて電圧が発生するため、その電圧を測れば温度がわかるという仕組みです。私たちが研究しているのは、この仕組みを発電に応用した熱電発電システム。工場、自動車、温泉などから捨てられている熱はたくさんありますが、これだけでは発電機は回せません。我々はこの捨てられている熱でも発電できる熱電発電の実用化を目指し、さまざまな要素技術について研究しています。
創エネ技術である熱電発電は、宇宙開発の現場ですでに使われています。私はこの技術を、身の周りで捨てられているエネルギーに適用し、SDGs、カーボンニュートラルに貢献したいと考えているのです。熱電発電の普及を目指し、材料開発だけでなく、その材料を実用化するまでのさまざまな課題を一つ一つ解決していきたいです。
週1回のゼミでは、学年の初めに基礎的な事項を教員からレクチャーし、前期の中盤以降は、専門書を使っての輪講を実施。学生が順番に先生役となり、各自割り当てられた章について講義を行います。
本研究室での基本的なスタンスとして目指すのは、「学生と教員が大人の関係であること」。実際には指導をしますが、できる限り学生の自主性を尊重するようにしています。研究の面において、学生は単なる装置のオペレーターではありません。その実験は何のために行うのか、常に考える姿勢を養ってほしいと願っています。
研究室所属学生メッセージ
材料に興味を持っていたことと、挑戦できる環境であると思い、この研究室を選びました。学部4年生から学外の学会発表などに参加できるため、大学院に進学しなくても貴重な経験を積むことができます。
また、学生実験で使用しない実験装置・方法は、指導教員である桑折先生が丁寧に指導してくださいます。また学部4年生のみの構成となっており、仲が良く、互いに支え合い、メリハリのあるところも研究室の魅力です。
現在は、CO2を排出せずに熱から電気へ可動部なしで直接変換できる、熱電発電モジュールの基板の研究をしています。熱電材料の特性は温度依存性を有するため、基板面内で熱を均一にする必要があります。従来の基板は酸化アルミニウムを用いているのですが、熱拡散率の高い炭素繊維(Carbon Fiber)とアルミニウムを複合化させ、熱拡散率の向上を目指しています。
今後は、発電効率を上げるため、性能が高い熱電材料や基板の研究を行い、サスティナブルな社会を目指します。